スポーツ中や段差で足首を内側にひねる「捻挫」。よくあるケガだからと湿布だけで済ませていませんか?実は、足首の捻挫をした人はしていない人に比べて再発リスクが約3.5倍、初回の捻挫から1年以内に最大40%の人が「慢性足関節不安定症」という捻挫を繰り返す状態になると報告されています。今回は、足首の捻挫の正体と最新の応急処置、くせにならないための治療についてご紹介します。
ちなみに湿布は単に痛みという感覚を抑えているだけで、治療効果は全くありません。
足首の捻挫で傷つくのはどこ?
足首を内側にひねったときに傷つくのは、多くの場合、外くるぶしの前方にある「前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)」です。足首の外側を支える靭帯の中で最も損傷しやすく、いわゆる「足首の捻挫」の大部分はこの靭帯のケガです。ひねりが強いと、そのすぐ下にある踵腓靭帯(しょうひじんたい)も一緒に傷つくことがあります。
応急処置の考え方は変わってきています
昔は「とにかく安静」でしたが、現在は「保護しながら、痛みの範囲で早めに動かす」という考え方(POLICE、PEACE&LOVEと呼ばれる原則)が主流です。
- 冷やす:氷と水を袋に入れ、濡れタオルで包んで20分。これを2〜3時間おきに繰り返します。受傷直後に温めるのは避けてください。
- 圧迫と挙上:包帯などで軽く圧迫し、足を心臓より高く上げて腫れを抑えます。
- 早めに動かす:痛みを目安に、足首を上下に動かす運動を早期から始めると回復が促されます。
- 早めに体重をかける:装具などで保護したうえで、痛みに応じて早くから歩き始めた方が、回復が早いことがわかっています。
- 固定しすぎない:ギプスのような硬い固定を長く続けると筋力が落ちてしまうため、必要な場合でも10日程度までが目安とされています。
痛み止めについては、種類によって使い方に注意が必要なものがあります。自己判断で長く飲み続けず、受診時にご相談ください。
病院に行くべき捻挫のサイン
- 体重をかけて歩けない、歩くと強く痛む
- くるぶしを押すと強い痛みがある(骨折の可能性があります)
- 腫れや内出血が強い
- 数日たっても痛みや腫れが引かない
- 過去に何度も同じ足首を捻挫している
「足首をひねった=前距腓靭帯損傷」とは限りません
ここまで前距腓靭帯のケガとしてお話ししてきましたが、実は、足首をひねったときに起こるケガは靭帯損傷だけではありません。同じ「ひねった」でも、次のようなケガが隠れていることがあります。
- 外くるぶしや第5中足骨(足の小指側の付け根)の剥離骨折・骨折
- 成長期のお子さんでは、靭帯より先に軟骨や骨がはがれる裂離骨折(レントゲンに写りにくいことがあります)
- 距骨の軟骨の損傷(距骨骨軟骨損傷)——痛みが長引く捻挫の陰に隠れていることがあります
- 腓骨筋腱の脱臼や、足首の上方の靭帯の損傷
これらは治療法も治るまでの期間も靭帯損傷とは異なるため、「何が傷ついているのか」を最初に確定させることが、捻挫治療の出発点になります。
診断には、まずレントゲン検査で骨折の有無を確認しますが、靭帯・軟骨・腱はレントゲンには写りません。当院では、超音波(エコー)検査で靭帯の損傷の程度をその場で確認し、痛みが強い場合や長引く場合には院内のMRI検査で軟骨や骨の内部の状態まで調べます。「レントゲンで異常なし=大丈夫」ではない、という点がいちばんお伝えしたいことです。
なぜ捻挫は「くせになる」のか
捻挫を繰り返す原因は、研究でかなり詳しくわかってきています。
- 傷ついた靭帯が伸びたまま治り、足首にゆるみが残る
- 靭帯にある「足首の傾きを感じるセンサー」が損傷し、とっさに足首を守る反応が遅れる
- 足首の外側を支える筋肉(腓骨筋)の力が落ち、反応も遅くなる
- 足首の柔軟性(そらす方向の動き)が制限される
- バランス能力・体幹の筋力の低下
- そして最大の原因が、リハビリテーションが不十分なまま復帰すること
つまり「捻挫ぐせ」は体質ではなく、初回の捻挫をきちんと治しきらなかった結果であることがほとんどです。逆に言えば、正しいリハビリで防げるということです。
再発予防のトレーニングは「足首だけ」では終わりません
研究では、バランス訓練や筋力訓練を組み合わせた8〜12週間のリハビリテーションプログラムと、スポーツ復帰後しばらくの装具(ブレース)の使用が、再発予防に有効とされています。
ただし、実際の診療では8〜12週間で終わらないケースもあります。捻挫を繰り返す選手を詳しく評価すると、足首そのものの問題に加えて、体幹や股関節まわりの筋力低下、体の使い方のくせが背景にあることが少なくありません。着地やターンのたびに足首へ余計な負担が集中する体の使い方をしていれば、足首だけ鍛えても再発は防ぎきれないからです。この場合は、体幹・股関節を含めた体づくりを年単位で続けていく必要があります。
「痛みが取れたら終わり」ではなく、捻挫しにくい体の土台を作るところまでが、本当の意味での捻挫の治療です。
当院の治療
損傷の程度に応じて装具を使いながら、早期から理学療法士によるリハビリテーションを行います。足首の動きと筋力の回復に加え、バランス訓練で再発しにくい足首を作り、競技への段階的な復帰をサポートします。復帰後の再発予防トレーニングは、併設のトレーニングジムKSTR(キソトレ)でも行っています。
足首の捻挫を繰り返しているかた、捻挫のあと痛みが残っているかたは、受付時間内にお越しください。スポーツ選手の診療についてはスポーツによるケガ・障害の診療とサポート活動のページもご覧ください。
参考文献
- Management of Acute Ankle Sprains. American Family Physician. 2025
- NATA Position Statement: Conservative Management and Prevention of Ankle Sprains in Athletes. J Athl Train. 2013
- An Updated Model of Chronic Ankle Instability. J Athl Train. 2019
- Weight, BMI and Stability Are Risk Factors Associated With Lateral Ankle Sprains and Chronic Ankle Instability. J ISAKOS. 2019








