腰椎分離症は、成長期のスポーツ選手に起こる腰の骨の疲労骨折です。18歳以下の腰痛の約半数は腰椎分離症と言われており、早期に発見できれば骨がつく(治る)可能性がある一方、「あまり痛くない」まま進行してしまうことがある、注意の必要な疾患です。この記事では、腰椎分離症の症状・検査・治療と、スポーツ復帰までの流れを解説します。
腰椎分離症とは――学生スポーツ選手に多い腰の疲労骨折
最近は小学校低学年からスポーツを始めるお子さんが多く、9歳前後から体のあちこちの痛みで受診される患者さんが増えます。二次成長がほぼ終わる16歳ごろまでは、身体能力の向上に骨の成熟が追いつかず、骨折が起こりやすい時期です。腰椎分離症は、腰の骨(腰椎)への負荷が増えるにもかかわらず、その負荷を受け止められるほど腰椎が成熟していないために起こる疲労骨折です。
野球やテニス、バスケットボールなど体幹をひねる動きを繰り返すスポーツに多いと言われますが、それ以外のスポーツでもよくみられます。
どこが骨折するのか?
腰椎の後ろにある「椎弓(ついきゅう)」と呼ばれる部分が骨折します。椎弓には上下の腰椎をつなぐ役割があり、骨折して不安定になると、腰椎がずれてしまう「腰椎分離すべり症」に進行することがあります。

「痛くない」のに危ないのはなぜ?
腰椎分離症の厄介な点は、強い痛みが出ないことがあることです。「腰が張った感じがする」程度で気づかれず、大人になってから腰痛で受診して初めて指摘されるケースもあります。
痛くないなら問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、実際には痛みが出ないように全身でかばっているから痛くないのです。かばった結果フォームが崩れ、競技のパフォーマンスが落ち、肩や膝など別の場所の痛みの原因にもなります。
さらに放置して骨折部が離れたままになると、腰椎分離すべり症に進行することがあります。すべり症になると、腰椎の中を通る神経のトンネルが狭くなり、足のしびれなどを起こす腰部脊柱管狭窄症につながります。このリスクは年齢が若いほど高いため、小学生〜中学生の腰椎分離症は特に注意が必要です。
10代の続く腰痛はMRI検査を
18歳以下の腰痛の実に5割は腰椎分離症と言われています。ところが、腰椎分離症はレントゲン検査だけでは3割がわからないとされ、CTでもわからないタイプの報告もあります。したがって当院では、10代の続く腰痛にはMRI検査が必須と考えています。早期に発見できるほど治癒までの期間が短くて済むため、院内のMRIで早期発見・早期治療を行っています。
当院での治療方針
治療方針は、患者さんとご家族の希望を十分に考慮したうえで決定しますが、可能な限り骨癒合(骨折部が再びくっつくこと)を目指したほうが良いと考えています。骨癒合までの期間は平均4ヶ月程度です。
骨癒合が期待できる場合は、いったんスポーツを中止して治療に専念していただくのが原則です。ただし大事な試合の直前など、状況に応じてご本人・保護者のかたと相談しながら決めていきます。発見時にすでに進行していて骨癒合が期待できない場合は、痛みに応じてリハビリを行いながらスポーツを続けます。
将来すべり症に進行するリスクが高い場合は、スポーツ活動の中止を強くお願いすることがあります。ご納得いただけない場合は、脊椎の専門医の受診をおすすめしています。数ヶ月にわたる治療には、ご本人とご家族への精神的なサポートが欠かせないと考えています。
スポーツ復帰と再発予防
骨がついたら終わり、ではありません。分離症が起きた背景には、体幹や股関節の柔軟性・筋力の不足、腰に負担が集中する体の使い方があることが多く、そのまま復帰すれば再発や別の故障につながります。当院では理学療法士によるリハビリテーションで体の使い方から見直し、段階的な競技復帰をサポートします。復帰後のトレーニングは併設のトレーニングジムKSTR(キソトレ)でも続けられます。
おまけ①:実は医師で腰椎分離症を持っている人は多いんです
医師はなにかとがむしゃらにやってしまう人が多いせいか、「中学高校で腰が痛いのを我慢して必死に部活をして医学部に入って、自分が腰椎分離症とわかった。あの時ちゃんと治療しておけば今腰が痛くて苦労していないのに」という典型的な(悪い)経過をたどっている人を、私の周りでも3、4人は知っています。特に外科系の医師は手術中ずっと立ちっぱなしのこともあり、腰椎分離症に悩まされている人は少なくありません。そのような先生に話を聞くと「絶対ちゃんと治しておいた方がいい」と口をそろえて言います。
おまけ②:疲労骨折なのに、なぜ「分離症」と呼ぶのか?
この病気が発見された当初、疲労骨折とは考えられていなかったからです。CTやMRIがない時代の検査といえばレントゲンで、椎弓が離れている状態(生まれつき骨が離れていると考えられていた)が腰痛の原因ではないかと考えられ「腰椎分離症」と名付けられました。検査技術が進むにつれ、実は疲労骨折であることがわかったのです。「腰椎椎弓疲労骨折」と名前を変えても良いと思うのですが、慣習のまま分離症と呼ばれています。
お子さんの腰痛が2週間以上続くときは、一度ご相談ください。診察は予約制ではありません。腰の痛みについては腰の痛みでお困りのかたへ、スポーツ選手の診療についてはスポーツによるケガ・障害の診療とサポート活動のページもご覧ください。

830×510-830x510.png)






