スポーツ時の怪我(学生編)

スポーツ時の怪我(学生編)830×510

スポーツに怪我はつきもの

スポーツをするということは、日常生活よりも活動性があがります。
また、同じスポーツといってもバスケットやサッカーなどの人どうしがぶつかり合う状況が起こりうるスポーツ(コリジョン=衝突スポーツといいます)のほうがスキーや自転車などと比べると怪我をする可能性は高くなります。
プロスポーツともなると、怪我を全くしていない選手のほうがまれになってきます。2022年に行われたサッカーワールドカップの日本代表も「どうして〇〇選手が入っていないんだ!」といった論調でマスコミが騒いでいましたが、怪我などでコンディションが悪かったんだろうと思います(当然ながらどの選手がどの程度の怪我を抱えているかはトップシークレットです)。

当院にも部活などのスポーツで怪我をした患者さんが受診されます。
今回はスポーツ中の怪我について診療の時に私が大事にしていることを、優先順位をつけて書いていきたいと思います。

1.(現在もしくは将来)仕事を続けられるか?

トップレベルのサッカー選手や野球選手などは1試合出場したら1億円なんてこともありますが、そのような人はほんの一握りです。オリンピック出場できるほどのレベルの人でもスポーツだけで生活するのはほぼ不可能です。相当実力があってプロスポーツ選手になれたとしても、その後選手として活躍できるのは良くて40歳までです。つまり人生80年とすれば、残りの40年間を選手である20年間のうちに稼いだお金で生活するか、他の職業につかないといけません。プロスポーツ選手になれたとしてもそうですから、そこまでの実力がないのであればなおさらのことです。
したがってスポーツを続けることにより後遺症が残るようなことになっては一度きりの人生、大変なことになってしまいます。
野球選手の肘や肩、バスケットボール選手の肩や膝など、現代医学ではどれだけ頑張っても後遺症を残してしまう怪我があります。特に中学高校ではスポーツに参加できる期間が短くスポーツに生活の大半をかけてしまっていることもあり休むことに対して抵抗が強いです。
よく考えて治療を行なっていただければと思います。

2.重要な試合に出場できるか?

高校野球の強豪校にもなると、1年中毎週のように他校との練習試合が組まれているところもあります。チーム内での競争もあり、一旦怪我をして休んでしまうとポジション争いに負けないかと不安になってしまい、焦って無理をする選手も多いです。特にレギュラー当落線上にいる選手はその傾向が強いですね。
人生経験があれば、「今自分のコンディションが悪ければ無理をしないで実力をつけて、ライバルが調子を落とすのを待つ」こともできると思いますが、このような高度な戦略を理解し実行するのは強い忍耐力を求められます。
外来でしっかりと今は無理をすべき時ではないことを説明しています。大事な試合でちゃんとパフォーマンスを出すことができるか?と考えています。逆に大事な試合の前であればリスクを説明した上で練習をしていただくことも、試合参加を許可することもあります。先ほどのサッカーワールドカップの話と重なりますが、優秀な指導者は選手のコンディションを把握し、試合に勝つためにどの選手を選べばいいかを考えます。診察は1週間を基本としていますが、大きな大会が近い場合などは週に2回3回の診察をお願いすることもあります。こまめに診察やリハビリを行い、大事な試合を逃さないようにしています。

3.また怪我をしないか?

スポーツによる怪我の場合、一度症状が改善したとしても再発を繰り返す場合があります。野球のピッチャーの肘や肩の痛みや、バスケットボールの足首の捻挫などはスポーツによる動作自体が痛みの原因のこともありますし、正しいフォームが取れないことが原因のこともあります。
症状が取れると通院されなくなるケースが多いですが、もう一歩先「なぜその怪我をしたのか、その症状が出たのか?」を改善しないと怪我を繰り返し、そのたびにチームメイトから取り残されたりレギュラー争いから脱落してしまうことになります。
また、怪我の予防のトレーニングはそのままパフォーマンスを上げるトレーニングです。体幹や下半身の安定性を増すトレーニングですので当院で予防のトレーニングを続けて行って悪いことはありません。「無事これ名馬」のことわざどおり、怪我をしない、故障をしない体づくりをしていかないとより高いレベルでのスポーツは難しいです。

4.誰のためにスポーツをしているか?

当院を受診して、診断がついたらおおよその試合までの復帰時期というのがわかるわけですが、場合によってはそれよりも早期の試合復帰を望まれることがあります。
「この子が出場しないとメンバーが足りない」
「県代表のメンバーに選ばれるかどうかがかかっている試合がある」
「本人が出たいといっている」
「家で試合に出たいと泣いている」
お気持ちはわかるのですが、無理をすることにより治療期間が長引いたり、他の怪我の原因になったりすることがあります。
「本人が・・・」と保護者の方はよくおっしゃるのですが、本人は痛いので無理してやりたくないのに保護者の方が熱心で早く復帰させたいと思っていらっしゃることもあります。お子様にご自身の夢を託したくなるお気持ちはよくわかるのですが、無理してスポーツをやって将来を台無しにしたり、後遺症が残ったりといったことにはしたくないのです。

私の仕事は「どうやって怪我を治療するか?」ではなく「どうやったら患者さんがまた怪我をせずに楽しくスポーツや日常生活を送れるか?」です。もっと言うならば「どうやったらまた怪我をして病院にかからなくて良くなるか?」だと思っています。
そのためには「なぜその怪我をしたのか?」「今の状態で何ができるか?」をしっかりとご理解いただき、1日でも早くスポーツ復帰ができるように、そして怪我をする前よりも良いパフォーマンスができるように一緒に頑張っていきたいと思います。

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