腰痛が続くとき知っておきたい、検査でわかること

骨転移を疑う腰痛

腰痛とがんの骨転移 ― 見分けるポイントと必要な検査

腰痛が続くとき、その多くは椎間板や筋・筋膜、脊柱管狭窄など整形外科的な原因によるものですが、ごくまれにがんの骨転移が背景に隠れていることがあります。本記事では、骨転移を疑うべき腰痛の特徴と、レントゲン(単純X線)・MRIでわかる所見、有効な検査の進め方を解説します。

評論家の山田五郎さんが原発不明がんで亡くなられたというニュースが報じられました。報道によれば、がんが発見されるきっかけとなったのは腰椎の圧迫骨折を伴う腰痛だったとされています。

なぜ腰椎にがんが転移しやすいのか

脊椎、特に腰椎は血流が豊富で、肺・乳腺・前立腺・腎臓・甲状腺など多くのがんが転移しやすい部位として知られています。転移巣が大きくなると椎体の強度が落ち、体重を支えきれずに「病的骨折(圧迫骨折)」を起こすことがあります。これが腰痛として自覚される、というわけです。

どんな腰痛だとがんの骨転移を疑う? ― 警告サイン(レッドフラグ)

通常の腰痛と区別するために、以下のような特徴(レッドフラグ)がないかを確認します。

  • 安静にしていても痛みが軽減しない、むしろ夜間や早朝に痛みが強くなる
  • 数週間〜数ヶ月かけて徐々に、かつ持続的に悪化する
  • 原因となる明らかな外傷がないのに強い痛みが出る
  • 発熱、体重減少、食欲低下など全身症状を伴う
  • がんの既往歴がある、または過去に治療歴がある
  • 50歳以上で、これまでに経験したことのない性質の腰痛
  • 安静時痛に加えて、足のしびれや脱力、排尿・排便障害を伴う(脊髄・馬尾への圧迫を疑う緊急サイン)

こうした特徴が一つでも当てはまる場合は、一般的な「疲労性の腰痛」として様子を見るのではなく、早めに整形外科を受診し、画像検査を受けることが勧められます。

骨転移を調べるにはどんな検査が有効?

血液検査でわかること

炎症反応(CRP)、貧血の有無、肝機能・腎機能に加え、アルカリフォスファターゼ(ALP)カルシウム値の上昇は骨代謝の異常を示唆します。また可溶性の腫瘍マーカー(PSA、CEA、CA15-3など)が原発巣の推測に役立つこともあります。ただし血液検査だけで骨転移を否定することはできません。

レントゲン(単純X線)で骨転移はわかる?

最初に行われる検査ですが、骨転移は骨量が20〜50%以上失われないと単純X線には映らないとされ、初期の転移は見逃されやすいという限界があります。それでも下記のような所見が手がかりになります。

  • 溶骨性変化:骨の一部が虫食い状・地図状に透けて見える(肺がん、腎がん、甲状腺がん、消化器がんなどに多い)
  • 造骨性変化:骨の一部が逆に白く濃く写る(前立腺がん、一部の乳がんに多い)
  • 椎弓根の消失(winking owl sign):本来左右対称に見えるはずの椎弓根の陰影が片側だけ消えている所見で、脊椎転移を疑う古典的なサインです
  • 椎体の圧潰・圧迫骨折:椎体の高さが不均一に潰れている、椎体後壁が後方に膨隆している

MRIでわかる骨転移の所見

骨転移の検出において最も感度が高い検査とされ、骨髄への転移が骨皮質を破壊する前の早期段階でも捉えることができます。

MRIで見られる代表的な所見は以下の通りです。

  • T1強調画像で低信号:正常な骨髄の脂肪信号が腫瘍組織に置き換わり、暗く写る
  • T2強調画像や脂肪抑制画像(STIR)で高信号:腫瘍や浮腫の部分が明るく強調される
  • 椎体の多発性・びまん性のまだら状信号変化
  • 後方要素(椎弓根、椎弓)への進展:単純X線のwinking owl signに相当する変化がより早期からわかる
  • 硬膜外への進展や脊髄圧迫の有無:神経症状の原因評価に直結する、MRI最大の利点
  • 軟部組織腫瘤の形成:椎体から周囲に張り出す腫瘤影

さらに全身の骨転移検索には骨シンチグラフィやPET-CTが併用されることもあり、原発巣の同定にはCT、内視鏡検査などが組み合わされます。

まとめ ― 気になる腰痛は早めに整形外科へ

当院では昨年1年間で新たに6件の腰椎への骨転移がわかりました。2ヶ月に1回のペースです。
「他院でレントゲン検査して、異常ないと言われたが痛みがとれない」とMRI検査を希望されて受診。MRIでわかるケースがほとんどです。
腰痛の多くは心配のいらないものですが、安静でも改善しない痛み、夜間痛、体重減少、しびれなどを伴う腰痛は、骨転移を含めた重大な疾患が隠れている可能性があります。「歳のせい」「疲れのせい」と自己判断せず、気になる症状があれば早めに整形外科を受診し、必要に応じてX線やMRIによる精査を受けることをお勧めします。

本記事は一般的な医学知識の解説を目的としたものであり、個別の症状の診断を行うものではありません。心配な症状がある方は、必ず医療機関を受診してください。

監修:福山かた・ひざ・こしのクリニック 院長・整形外科専門医  原道治

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