インシデント・アクシデントレポート

インシデントアクシデント830×510

業務にミスはつきものです

どの業界や組織などでも同じだと思いますが、仕事上ミスはつきものです。
特に当院は多種多様な検査機器がありリハビリの人数も多いので、一つのミスで多くの患者さんにご迷惑をかけてしまうことになりかねません。
医療機関に勤めてあるかたはご存知かもしれませんが、この様なミスが起こらない様にするための対策として、「インシデント・アクシデントレポート」があります。「ヒヤリハット」と言った方がわかりやすいでしょうか?

インシデントとアクシデント

「ブログの書き方」のような参考書をみると、「なるべくカタカナを使わないように」となっておりますが、どうしてもこの2語は外せないので説明させてください。

医療に限らず仕事上ミスがあったとき、そのミスが

1.患者さんの不利益につながったとき

2.患者さんの不利益になる前に気がついたとき

の2種類に分けれます。

1.をアクシデント(事故)といいます
2.をインシデント(事象)といいます

ハインリッヒの法則

1929年に発表された論文で、ハインリッヒの法則があります。

「傷害を伴った災害を調べると,傷害は伴わないが類似した災害が多数発見されることがよくある。潜在的有傷災害の頻度に関するデータから,同じ人間の起こした同じ種類の330件の災害のうち,300件は無傷で,29件は軽い傷害を伴い,1件は報告を要する重い傷害を伴っていることが判明した。このことは5000件以上について調べた研究により追認されている。」

–H. W. ハインリッヒ、D. ピーターセン、N. ルース(著)井上威恭(監修)、(財)総合安全工学研究所(訳) 『ハインリッヒ産業災害防止論 海文堂出版(株) 1987年(昭和62年)9月 2版 ISBN 430358052X p59-60』 wikipediaより

この「300例」がインシデントにあたり、「29例」がアクシデント、「1例」が重大アクシデントにあたります。例えば同じ「診察する時に患者さんと違うカルテを開いている」といったミスを330回した時に、300回はだれかがカルテが間違っているのに気がつくけど、30回は気が付かずに間違った処方をしたりしてしまう。ということになります。
この割合は文献によって違ったりしますが、大事なのは「1つのアクシデントの裏にはたくさんのインシデントがある」ということです。
そこから派生して労働災害を減らすには「インシデントをいかに減らすか」が重要であるという考え方が出てきます。

インシデントを減らすことがアクシデントを減らすことにつながる

当院では、インシデント、アクシデントがあるたびにレポートを書いています。レポートには
・発生した日時
・インシデント(アクシデント)に気がついた人
・どのような不利益が起こったか
・インシデント(アクシデント)が生じた経緯や関係した職員名
・生じたインシデント(アクシデント)が起きた原因
・解決方法、改善点

などを記載します。一つのインシデント・アクシデントは複数の職員がかかわっていることがあるため、かかわった主要な職員全員に提出をお願いしています。

大事なのはこのレポートを数日のうちに、可能であれば当日中に提出することです。記憶がはっきりとしたうちに提出しないと、経過があやふやになり、原因究明や解決策が見出せなくなります。

たった一つのミスで大きな問題が生じることはまれです

レポートを読むと、職員一人が原因で問題がこじれてしまう例は少なく、「Aさんがいつもやっていること」と「Bさんがいつもやっていること」が運悪く重なった時に問題が生じていることがわかります。もちろん「ついうっかり」やってしまうことや、「いつもと手順が違ってて、いつものやり方ができていなかった」というのも見受けられます。
そのような問題点をみんなで見つけ出し、再発しないようにするためにはどうすれば良いかを一つ一つ解決していっています。カルテ記載のルールを決めたり、ファイルに挟むタグを作ったり、エクセルで表を作ったりしています。一度決めたルールはそのままとせず、しばらくやってみて不都合があるようなら他のルールを試しています。

開院当初はトラブルばかりでした

「会計まちで2時間待たせた」「リハビリの時間なのに電子カルテ上受診したことになっていなかった」等々、当院で実際に起こったアクシデントです。
開院して2年間ぐらいは、残念ながら毎日といっていいほどこの手のトラブルが起こっていました。
毎日のようにレポートが上がってきていました。最初はそのレポートも内容があやふやなこともあり、人によっては1週間毎日書き直しをさせたこともありました。
・・・まあ、なんというか、ここで職員の文章能力が試されます。自分も国語、得意な方ではなかったのですが、ちゃんとした文書を書けない職員は何度でも書き直しです。繰り返し書いているうちにレポートも上手にまとめれるようになってきますが、不思議とミスも減っていきます。
辛抱強くレポートを書いていくと、徐々にアクシデントは減ってきました。開院当初から通院されている患者さんも何人かいらっしゃると思いますが、来院平均患者数は令和2年の実に倍になっています。それでもアクシデントの発生数は2週間に1度程度まで下がってきました。
開業を予定されている先生が見学に来られることがたまにあるのですが、スタッフがてきぱきと患者さんを誘導したり説明したりするのをみて非常に驚かれます。
自分自身、当院開院前に先輩方のクリニックを見学に行き、スムーズに誘導ができているのを見て、どのようにしているのかをいろいろと勉強しました。結局はこのような地道にトラブルの芽をつぶしていく作業を繰り返していくしかありませんでした。

アクシデントゼロを目指して

完全にアクシデントをゼロにすることは残念ながら不可能です。最近は外食産業などで人手不足の影響もありロボットの導入などが広がっていますが、医療現場、特に当院のようなクリニックは人力に頼らねばなりません。
ほんの些細なミスで大きな問題にならないよう、日々精進してまいりたいと思います。

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