関節に水がたまるのは痛みの原因となります
整形外科診療所に通院している人のうち、約30%が膝の痛みを訴えています。
多くの場合は変形性膝関節症や半月板損傷などの膝関節の中の問題であることが多いです。
膝関節の中で何らかの問題が起こると、膝関節に水がたまります。
そもそもたまっている水の正体は?
たまっている水とは、いったい何なんでしょう?
膝周囲の骨骨折が原因で血が関節内にたまったり、細菌感染が原因であるなど特殊な場合を除き、多くは「滲出液(しんしゅつえき)」と言われる黄色く透明な液体です。
滲出液は炎症が起こっている組織に集まってきます。炎症とは「いたんでいる組織を修復する体の反応」です。
たとえば擦り傷ができたとき、出血が止まっても透明な黄色い液体が傷口からにじんできます。花粉症や鼻風邪をひいたときに鼻水が出てくるのも滲出液の一種です。関節の中なので、滲出液の逃げ場がなくて関節の中にたまるのです。
正確に言えば、関節を覆っている膜から吸収される滲出液より、炎症で関節内に増える滲出液のほうが多いので関節に滲出液が溜まります。
「水を抜いたらクセになる」は真っ赤な嘘
「水を抜いたらクセになる」と言われるかたがいらっしゃいますが、水がたまる原理がわかっていればこれは間違いだとわかると思います。
言ってみれば「鼻水がたまったので、鼻をかんだけどどんどん出てくる。鼻をかむとくせになる」と言っているようなものです。鼻水を止めたかったらあったかい布団に入ってしっかり栄養とって風邪を治しましょう。
水がたまるのは痛みの原因になります・・・が、
関節内に水がたまると、関節をおおっている膜に対する圧力が上がります。関節の膜には痛みを感じるセンサーがありますので、関節内に水がたまると痛みが出ます。痛みは関節膜にかかる圧力によりますので関節の圧力が高まる状態で痛みは悪化します。
例えば「深く曲げると痛い」「階段を登る時に痛い」時に痛みが悪化するのは関節に水が溜まった時の典型的な症状です。
このような症状の時には水をぬくと楽になります。逆に言えば関節の圧が上がるような動作をしても痛みが変わらない時は水がたまっていたとしても抜かなくてもいいわけです。
水を抜いても症状が改善しない場合は、水がたまっている以外に痛みの原因があるかもしれません。MRIなどで詳しくみてみた方がいいこともあります。
注射による治療法
関節に薬液を注射して症状を改善する方法はいくつかあります。
ステロイドを注射のメリットデメリット
ステロイドというお薬には炎症を抑える効果があります。従って関節に水がたまっている時に関節にステロイドを投与すると水がたまりにくくなります。そのかわり炎症がおさえられるということは傷の治りも遅くなるということですので、痛みがおさまったからと言って無理は禁物です。
ヒアルロン酸は効果が低いけどデメリットも少ない
膝と肩関節の変形性関節症にはヒアルロン酸の注射も適応になります。よく市販の健康食品でヒアルロン酸やコンドロイチンが売っていますが、医学的には無意味です(効果があるなら当院で販売しています)。ヒアルロン酸は軟骨再生の材料になりますし、軟骨どうしがスレあった時のまさつを下げる潤滑油の働きをします。関節の水を抜く時に一緒に入れることが多いです。ステロイドのように炎症を抑えて軟骨の治癒が悪くなるデメリットもないです。
多血小板血漿療法
ご自身の血液の中の血小板という成分を抽出して関節内に投与することにより、創傷治癒を促進して関節液の発生を抑えます。ヒアルロン酸と同じくデメリットが少ない治療法です。自由診療のため金額が高いのが欠点です。
内服薬、湿布
基本的に鎮痛剤や湿布などは症状を悪化させるだけだと考えてください。痛みという感覚は人間が生きていく上で必要だからあるのです。それを「動く時に痛いから」と薬をつかって痛みを止めて動いていいことはないです。仕事などでどうしても使わなければならない状況はあると思いますが、将来のご自身の健康を前借りしているとお考えください。
根本的な解決は炎症を抑えること
関節の軟骨が損傷する→炎症が起こる→関節に水がたまる という因果関係がありますので、根本的な解決は軟骨の損傷を悪化させない、損傷をなるべく早く改善させることになります。
恒例になるほど変形性膝関節症のリスクがあがりますが、原因は膝を安定させる筋力が落ちてしまっていることです。スポーツをしていて変形性関節症になるのであればともかく、日常生活に支障が出るほどの筋力低下があっても、痛みが出ないような動きを自然と身につけてしまっているので症状としては現れないのですが、それすらもできなくなってきているほど筋力や身体能力が低下してきて初めて当院を受診されます。
当然ながらそのようなかばう姿勢は他の関節に負担をかけたり、非効率だったりします。リハビリで修正しておかないと、痛みが改善してもまたどこか別の部位が痛くなる原因になってきます。
変形が高度になると、リハビリでトレーニングを行うにしても注意しなければならないことが多くなります。理学療法士やトレーナーと一緒になって知識と筋力をつけていきましょう。








